ニセモノヒツジ・ホンモノヒツジ
2009/03/09
title:ニセモノヒツジ・ホンモノヒツジ
author:秋さん

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「紫龍、入りますよ。」

そう言って部屋に入ると、慌てて何かを隠す紫龍。

「?」

気になったがそれを口にした所で素直に教えてくれるとも思えない。
隠し事をするような彼ではないけれど、時々思いもよらない、もちろんいい意味で驚かしてくれる彼だから。

そんな紫龍を見て、ムウに小さないたずら心が湧いてきた。

「どうしたの?ムウ。」

聞いてきた紫龍に、先程の事には気がつかない振りをして。

「ちょっと買ってきて貰いたい物があるんですが、お願いしてもいいかな?私は調べ物をしていて手が離せないので。」

隠した物が気になるのか少し悩んだ様子だったが、ムウの頼み事を断れる紫龍ではない。

「うん、わかった。」

そう答えてムウに買ってくる物を確認すると、紫龍は部屋を出て行った。




「さて、と。」

紫龍が出て行くのを待ち兼ねたように、ムウは先程紫龍がいた場所に向かい、何を隠していたのか探してみる。
やはり慌てて隠したのだろう、それは程なく見つけられた。

「……っ。」

思わず顔が綻んでしまう。

どうあっても彼は私を好きで好きで仕方がないのだ。
それは自惚れでもなんでもなく、私が彼をどうしようもなく愛しいように。

そんな事をクスクス笑いながら考えて、先程わざと出掛けさせた紫龍の帰りを待ち侘びる。




「ただいまー。」

紫龍が帰って来た。

「ムウ、これでよかった?」

そう言いながら部屋に入って来た紫龍をいきなり抱きしめる。

「え、何?どうしたの、ムウ。」

突然の事に紫龍が驚いていると、

「ねえ紫龍、淋しかったんですか?」
「え?」

ムウの問い掛けの意味がわからず暫くぽかんとしていたが、ややあってある事に思い当たり、

「ああっ!もしかしてあれ…。」


紫龍が隠していてムウが見つけた物、それは羊のぬいぐるみだった。
腕にすっぽり収まるくらいの。


「どうしてぬいぐるみなんか持ってたの?」

そう聞いてくるムウに紫龍は顔を赤らめながら逸らし、

「だって…最近ムウが忙しくしていて一緒にいれなかったから…だからせめてこれで紛らわせようかなっ…て。」


そんな事を言われて嬉しくない訳がない。
それが誰よりも愛しい人からの言葉ならなおさら。


「紫龍、淋しい思いをさせてしまいましたね、すみませんでした。だけどもう必要ないですよ。」

ムウの言葉に紫龍が顔を上げると、

「こんな代わりじゃなく、私がずっと隣にいますから。それにこんな物に一時でも紫龍を奪われていたなんて悔しいですからね。」

そう言うとムウを見上げていた紫龍の唇を深く塞ぎ、その悔しさをぶつける様にきつく抱きしめた。


もう代わりで紛らわそうなんて思わせないように、私を貴方に刻み込もう。

深く、強く。


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ニセモノヒツジ・ホンモノヒツジ/20090211~0327 HAPPY BIRTHDAY to MUxSHIRYU!!!